都心の不動産価格高騰を見て、正直うらやましくなりました

最近、不動産価格の高騰がニュースでよく取り上げられていますよね。友人が数年前に買ったマンションの相場が、購入時よりかなり高い価格になっていると嬉しそうに話していました。 こういう話を聞くと、正直うらやましいという気持ちが湧いてきますよね。同じように感じたことがある方も、きっと少なくないのではないでしょうか。

不動産はローンを組めば少ない自己資金で大きな資産を持てます。いわゆるレバレッジが効くということです。自分もあのとき無理してでも買っておけばよかったかもしれない、と何度か思ったことがあります。

一方で、このサイトはシミュレーターを持つサイトです。感覚だけで結論づけてしまうのは本末転倒。頭金をどうするか、家賃と月々のローン返済額のどちらが高いか、売却時の税金はどうなるか。条件をきちんと揃えて計算してみないと、本当のところは分からないはずです。そこで実際に数字を出してみることにしました。

条件を揃えて計算してみました

前提として、物件価格1億円のマンションを、今から1年前・3年前・5年前・10年前(おおよそ2025年・2023年・2021年・2016年頃)に買っていたケースを比較しました。ローンは35年変動金利0.7%、頭金は0円(フルローン)・1,000万円の2パターンです。物件の値上がり率は、国土交通省の不動産価格指数(東京都・マンション)をもとに、それぞれの期間の実際の年率換算値を使っています。売却時は仲介手数料、譲渡所得税(マイホームの3,000万円特別控除、5年超保有で20.315%・5年以下で39.63%)を差し引いた手取りで計算しました。

株式側は同じ資金を米国株S&P500連動ETF(SPY)に投資したケースとし、値上がり益には20.315%の課税(NISA未使用)を反映しています。

家賃は月15万円・20万円・25万円の3パターンで想定しました。ローンの月々返済額(頭金0円で26.9万円、1,000万円で24.2万円)と比べて家賃の方が安ければ、その差額を毎月S&P500に積み立てたと仮定しています。

逆に家賃の方がローンより高いケース、つまり「持ち家の方が月々のキャッシュフローが軽い」場合については、その分を株式にも回して「家を買った上でさらに株式も積み立てる」という計算も本来はあり得ます。ただ、そこまで条件を広げると比較が複雑になりすぎてしまうため、今回は住居費として払う金額(ローンまたは家賃)以外の余剰資金は考えない、というシンプルな前提に留めました。今回のケースでは、家賃よりローンが安くて浮いた差額もそこまで大きくない、というのもあります。

頭金 ローン月額返済 家賃15万円との差額 家賃20万円との差額 家賃25万円との差額
0円(フルローン) 26.9万円 11.9万円/月を積立 6.9万円/月を積立 1.9万円/月を積立
1,000万円 24.2万円 9.2万円/月を積立 4.2万円/月を積立 差額なし

計算結果

不動産側の損益は家賃の水準にかかわらず一定なので、下の表では頭金ごとに家賃3パターンの株式利益と並べて見比べられるようにしています。

頭金0円(フルローン)の場合

保有期間 不動産損益 株式利益(家賃15万) 株式利益(家賃20万) 株式利益(家賃25万)
1年 +23万円 +12万円 +7万円 +2万円
3年 +1,366万円 +127万円 +73万円 +20万円
5年 +2,450万円 +414万円 +239万円 +65万円
10年 +4,742万円 +2,237万円 +1,293万円 +350万円

頭金1,000万円の場合

保有期間 不動産損益 株式利益(家賃15万) 株式利益(家賃20万) 株式利益(家賃25万)
1年 +30万円 +286万円 +281万円 +277万円
3年 +1,386万円 +905万円 +851万円 +807万円
5年 +2,483万円 +1,614万円 +1,439万円 +1,294万円
10年 +4,803万円 +5,495万円 +4,551万円 +3,765万円

頭金0円の株式利益がどの家賃でも小さいのは、そもそも元手がほぼゼロで、家賃と差額積立の分しか原資がないためです。ここで見えてくるのは、フルローンで1億円の物件を持てる不動産のレバレッジの強さで、諸費用だけの実質的な自己負担でも、期間が長くなるほど大きな含み益を積み上げていきます。

興味深かったのは、頭金1,000万円・保有期間10年・家賃15万円のケースだけ、株式(+5,495万円)が不動産(+4,803万円)を上回った点です。家賃が安いほど毎月の差額積立が大きくなり、それが10年間S&P500で複利運用されたことが効いています。不動産の値上がり益は物件価格1億円という枠に固定されるのに対し、株式は積立額と運用年数次第でその枠を超えてくる、という構図が見えてきました。

物件価格7,500万円の場合はどうでしょうか

1億円という物件価格自体が現実離れしている気もしたので、7,500万円のマンションを買った場合も同じ条件で計算し直してみました。ローン返済額はそれに応じて下がり、頭金0円で月20.1万円、1,000万円で月17.5万円になります。保有コスト(管理費・修繕積立・保険・固定資産税)も物件価格に比例させて75%に縮小しました。

頭金0円(フルローン)の場合

保有期間 不動産損益 株式利益(家賃15万) 株式利益(家賃20万) 株式利益(家賃25万)
1年 +22万円 +5万円 0円 0円
3年 +1,046万円 +55万円 +1万円 0円
5年 +2,176万円 +179万円 +5万円 0円
10年 +3,793万円 +970万円 +26万円 0円

頭金1,000万円の場合

保有期間 不動産損益 株式利益(家賃15万) 株式利益(家賃20万) 株式利益(家賃25万)
1年 +29万円 +280万円 +277万円 +277万円
3年 +1,067万円 +833万円 +807万円 +807万円
5年 +2,209万円 +1,379万円 +1,294万円 +1,294万円
10年 +3,853万円 +4,228万円 +3,765万円 +3,765万円

7,500万円まで価格が下がると、ローン返済額(17.5万円〜20.1万円)が家賃20万円・25万円をほぼ下回るため、差額積立が意味を持つのは家賃15万円のケースくらいになります。それでも頭金1,000万円・10年保有・家賃15万円では株式利益が+4,228万円まで伸びますが、不動産損益+3,853万円は上回りませんでした。1億円のケースで見えた逆転は、より大きい物件価格・より安い家賃という条件が重なって初めて起きていたことが分かります。

不動産の損益自体は物件価格が下がった分だけ素直に縮小しました。1億円のケースと比べると、10年保有・頭金1,000万円で不動産損益は4,803万円から3,853万円に下がっています。物件価格が下がるほど、不動産のレバレッジで稼げる絶対額は小さくなるようです。

今振り返って思うこと

うらやましいと感じていた不動産の売却益は、少ない頭金で大きな資産を動かせるレバレッジの恩恵が大きかったのだと数字で確認でき、感覚が裏付けられた部分はありました。ただ、それは「自己資金効率」の話であって、家賃が十分安く積立余力が大きい場合や、物件価格に対して頭金の比率が高い場合には、株式投資が上回るケースも出てきます。どちらが得かは、頭金の額・家賃水準・保有期間の組み合わせ次第で変わる、という当たり前だけれど見落としがちな結論に、自分自身も落ち着きました。

漠然と「不動産は得、株はそれほどでもない」と思っていましたが、条件を揃えて数字にしてみると、そのイメージがかなり単純化されたものだったのだと気づかされました。同じような印象を持っていた方には、少し意外に感じていただけるかもしれません。

今ならこう考えます

自分がこれから何かに投資するなら、頭金をどれだけ用意できるか、今の家賃はローンと比べて高いのか安いのか、何年その資金を動かせるかを先に考えると思います。頭金が少なくレバレッジを最大化できる状況、あるいは今の家賃がローンよりかなり高い状況なら不動産に分がある一方、家賃が既に十分安い、またはまとまった自己資金を長期で運用できるなら株式に分がある、というのが今回の計算から見えてきた大まかな判断軸です。

まとめ

不動産の売却益がうらやましいという気持ちは、レバレッジの効果を数字で見てみると、納得できる部分が多くありました。ただし今回の計算はあくまで一つの前提条件(物件価格1億円・7,500万円、金利0.7%、想定家賃月15〜25万円など)での試算であり、実際の売却では査定額と実際の売却価格に都心でも2〜3割ほどの乖離が出ることがありますし、「いつ売れるか」自体が読めないという不確実性は今回の数字には織り込めていません。不動産は「売れて初めて利益になる」資産だという点は、忘れずにおきたいところです。

もしよろしければ、頭金や保有期間の条件を変えるとどうなるか、シミュレーターでご自身の条件でも確認してみてください → シミュレーターを使う